今年の日本のゲーム業界は、なんとなく落ち着かない。
先日のレベルファイブ・日野晃博氏のAIをめぐる騒動。小島秀夫氏をめぐるSonyとの関係の変化。そして一昨日の日本ゲーム大賞では、桜井政博氏が「独創性」について語り、ゲームデザイナーズ大賞も今回で幕を閉じることになった。もちろん、それぞれは別々の出来事だ。ただ、こうして並べてみると、今年はゲームの作り方そのものが大きく変わろうとしているようにも感じる。
AI、開発規模、ビジネス、そして独創性。
大きな問題が起きている、と言うほどではない。でも、ゲーム業界の表面に見える華やかさの裏側で、何かが動いている。そんなことを少し考えながら、今年の東京ゲームショウを歩いてきた。
今日はビジネスデイ初日。
まず感じたのは、今年のTGSはかなり「安定している」ということだった。少なくとも大手メーカーのブースを見ている限り、ゲーム業界が急に別の方向へ走り出したような印象はない。むしろ、それぞれのメーカーが今持っているIPや開発ラインを、かなり整理された形で見せている。
スクウェア・エニックスで最も目立っていたのは、やはり『ファイナルファンタジーVII リベレーション』
『FFVII リメイク』3部作の完結作ということもあり、ブースの中心はほぼFFVIIだった。試遊も大きく開かれた構成で、ブース自体もかなり広い。巨大なメテオを含めた展示も含め、全体的に余裕のある作りになっている。
こういうところは、今のスクウェア・エニックスらしい。一つの巨大IPを中心に置きながら、その周囲を無理に派手な仕掛けで埋めるのではなく、ブランドそのものを見せていく。FFVIIというコンテンツの規模を考えれば、それだけでも十分に成立している。
Sonyのブースはかなり対照的だった
『Grand Theft Auto VI』の試遊は完全に閉じられた空間になっていて、外からその中身を見ることはできない。その周辺では『モンスターハンターワイルズ』など、すでに多くのユーザーに知られているタイトルが展示されている。「見せる」ことと「見せない」ことをかなり明確に分けている印象だ。
KONAMIは今回、少し違った意味で面白かった
『悪魔城ドラキュラ』や『幻想水滸伝』など、過去のIPをかなり前面に出している。さらに印象的だったのは、単純に新作を展示するだけではなく、『悪魔城ドラキュラ』など過去の作品に関する設定資料やデザインを見せるコーナーまで用意されていたことだ。KONAMIは2026年に「↑↑↓↓←→←→BA」40周年を迎えており、今回の展示もその歴史をかなり意識した構成になっている。以前のKONAMIといえば、長い間「過去の大作IPをどうするのか」という話が付きまとっていたメーカーでもある。
それが今は、過去のIPそのものをもう一度資産として見せ始めている。これは単純な懐古ではなく、今後のKONAMIがどこに軸足を置こうとしているのかを見るうえでも興味深い。
コーエーテクモでは、『Wo Long 2: Wings of Ember』が中心
試遊では「長坂」の一部をプレイでき、ボスとして曹仁が登場する。前作の方向性を引き継ぎながら、二節棍や新システム「凰技」など、アクションそのものをさらに前に出している。実際に見ると、今年の大手ブースの中では比較的「ゲームを遊ばせる」ことそのものが前に出ている。
巨大IPの展示というより、ゲームそのものを触らせて興味を持たせるタイプ。ここはスクウェア・エニックスやSonyとは少し違う。
今回かなり印象に残ったのがカプコン。
人の多さだけで言えば、間違いなくトップクラスだった。
『モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』を中心に、大型LEDと巨大な演出、さらにアイルーのコスプレまで組み合わせていて、遠くから見てもカプコンのブースだと分かる。『モンスターハンターワイルズ』の大型拡張コンテンツを世界初の試遊出展としていることもあり、かなり強い集客力を持っている。
その一方で、展示を見ると『ロックマン: デュアル』、『ドラゴンズドグマ 2:ダークアリズン』が並び、その裏には『鬼武者』、『バイオハザード』、『ストリートファイター6』などがある。
カプコンの面白いところは、現在のIPポートフォリオがとにかく広いことだ。アクション、ホラー、格闘、RPG、そして長期シリーズ。一つのタイトルに依存しているというより、複数のIPがそれぞれ別の場所で動いている。そのため、どのタイトルの前にも人がいる。これは単純に「人気作がある」という以上に、カプコンという会社そのものが一つのゲームブランド群として成立しているように見える。
SEGA/ATLUSもかなり大きく、そして賑やかだった
今年は過去最大規模のブースとなっており、『STRANGER THAN HEAVEN』と『P4R』を中心に、龍が如くスタジオの新作とペルソナを並べている。片方では龍が如くスタジオの新しいタイトルを見せ、もう片方では『P4R』を大きく押し出す。
SEGAもまた、現在の新作だけではなく、過去から積み上げてきたIPを同時に動かしているメーカーだと感じる。
今回かなり人を集めていたのがサンリオ
ここまで来ると、ゲームショウというより「キャラクターIPの展示会」としてのTGSの広さを感じる。ゲームそのものだけでなく、キャラクター、グッズ、イベント、コラボレーションまで含めて、人を集める力がある。
そして、今年のTGSを歩いていてもう一つ目立ったのが、ゲームメーカー以外の存在感だった
特にDMM GAMESはかなり大きなブースを構えていた。今回の出展は過去最大規模で、『刀剣乱舞ぱずぎり』『マブラヴ ガールズガーデン』『Muv-Luv: Tactics カーリダーサの悪夢』『ドットアビス』『恋姫†大戦』など、多数のタイトルを一つのブースにまとめている。『刀剣乱舞ぱずぎり』の先行体験をはじめ、ステージやフォトスポット、ノベルティなども含め、単なるゲームの試遊会というより、DMM GAMESというプラットフォームそのものを見せる構成になっていた。これは今年のTGSを考えるうえで意外と重要な部分だと思う。
スクウェア・エニックスやカプコンのように、一つのIPを巨大なブランドとして見せるメーカーがある一方で、DMMのように複数のタイトルとサービスを一つのプラットフォームに集約して見せる会社もある。ゲーム業界のビジネスモデルが一つではなくなっていることが、こうしたブースからも分かる。
そしてホールを歩いていると、ゲームそのものよりもPCや周辺機器の展示もかなり多い。ASUSのROGは20周年を記念した「ROG Edition 20」を前面に出し、ゲーミングPCだけでなく、モニター、ルーター、チェア、ポータブルゲーム機まで展示。LenovoもLegionのゲーミングPCから、ゲーム開発向けのThinkStationやThinkPad Pシリーズまで並べていた。
I-O DATAはGigaCrystaの新ブランドや最新モデル、未発表モデルまで展示。GALLERIA、G-TUNE、AORUS、MSI、BenQなども並び、さらにストレージのキオクシア、SanDisk、アーケードスティックやゲームパッドのHORI、GRAPHT、Corsair、Fanatec、ゲーミングチェアのSecretlabなど、ゲームを取り巻くハードウェアの層もかなり厚い。
実際、今年のTGSはゲームソフトだけを見ていると分からないほど、ゲームを取り巻く産業そのものが広がっている。PC、モニター、ストレージ、入力デバイス、チェア、配信機器、そしてプラットフォーム。ゲームを作るメーカーだけではなく、「ゲームを遊ぶ環境」を作る企業まで含めて、一つの巨大な市場としてTGSに集まっている。
そう考えると、今年のTGSが「安定している」と感じた理由も少し見えてくる。ゲームそのものは大きなIPを中心に動いている。一方で、その周囲にはハードウェアやプラットフォーム、キャラクター、配信など、ゲームを支える産業がさらに広がっている。TGSはもはや、新作ゲームを発表するためだけのイベントではない。日本のゲーム産業が現在どこまで大きくなっているのかを、そのまま一つの会場で見ることができる場所になっている
こうして一通り歩いてみると、今年のTGSはかなり安定している。大きなブースが並び、人気タイトルには長い列ができ、各メーカーもそれぞれの強みをしっかり見せている。少なくとも会場から受ける印象は、業界が不安定になっているというものではない。
ただ、今回のTGSで強く感じたのは、その安定感の裏側にある変化だった。IPの使い方、開発規模、ゲームの作り方、そして「新しいものを作る」とは何なのか。会場そのものはいつも通り華やかだった。でも、そこから少し離れて全体を眺めてみると、日本のゲーム業界が次の段階へ向かう途中にあるようにも見える。
今年のTGSは、何か大きな答えを見せてくれたわけではない。むしろ、これから何が変わっていくのかを考えるきっかけになった。








