今年、IGNが10点満点を付けたゲームは6本になった。『Mixtape』『Mina the Hollower』『Forza Horizon 6』『鬼武者 Way of the Sword』『Valheim』、そして『ファイアーエムブレム 万紫千紅』。かつてIGNは8点前後の評価が多いというイメージから「IG8」と呼ばれることもあっただけに、今年の10点の多さはかなり目立つ。ただ、「今年のIGNは10点を出しすぎている」とだけ考えると、この現象の面白い部分を見落としてしまう。
気になるのは、同じゲームに対しても評価が大きく変わることだ。分かりやすいのが『Forza Horizon 6』である。IGN本家は10点を付けた一方、IGN JAPANは8点だった。IGN JAPANも、日本を舞台にした広大なマップやドライブそのものの楽しさは高く評価している。それでも、過去作と比較したときの新鮮さやコンテンツ面での物足りなさなどを理由に、10点には届かないと判断している。
同じゲームを遊び、長所も認めた上で、10点と8点に分かれる。ここで重要なのは、どちらが正しいかという話ではない。そもそもゲームレビューには、「ここまでなら10点」という共通の基準が存在しないからだ。そして今年10点を取った作品を見ていくと、その違いがさらに分かりやすくなる。これらのゲームは、必ずしも欠点の少ないゲームではない。むしろ、特定の長所が非常に強く、その部分がゲーム全体の評価を大きく押し上げている作品が多い。
『鬼武者』は剣戟とレベルデザインの落差
その特徴がはっきり出ているのが『鬼武者 Way of the Sword』だ。IGN本家は10点を付けており、特に高く評価しているのが剣戟アクションである。一閃、弾き、崩しといったシステムによって、敵の攻撃をただ待って反撃するのではなく、戦闘中に相手の動きを見ながら判断することが求められる。ボス戦でも敵のパターンを観察し、それに合わせて対応すること自体がゲームプレイになっている。剣を振る感触や戦闘の駆け引きについては、確かに非常に完成度が高い。
一方で、IGN JAPANの評価は7点にとどまっている。こちらでは、戦闘そのものだけでなく、それを取り巻くマップや探索の設計にも目が向けられている。実際、戦闘以外では移動距離が長く、どこへ進めばいいのか分かりにくい場面もあり、探索が「何かを発見するためのもの」というより、次の戦闘へ移動するための時間になってしまうことがある。
つまり、同じゲームを見ても、剣戟アクションの突出した完成度をどこまで重く見るかによって評価が大きく変わる。アクション部分については一級品なのに、それを支えるレベルデザインが十分に追いついていない。この落差を重く見るなら7点になり、戦闘の完成度を強く評価するなら10点にもなる。『鬼武者』は、10点という評価が「欠点がない」という意味ではなく、「突出した長所をどこまで評価するか」によって成立し得ることを、かなり分かりやすく示している。
『万紫千紅』はRPG化の功罪
『ファイアーエムブレム 万紫千紅』も、方向は違うが、長所と短所がはっきりした作品だ。今作の大きな特徴は、従来のシリーズよりもRPGとしての要素を大幅に拡張したことにある。4人の主人公を中心とした物語に加え、自由に移動できるフィールド、探索、ダンジョン、育成などが組み込まれている。任天堂自身も、今作では「RPGライク」な要素を強めたと説明している。これは今作の大きな魅力だろう。従来の『ファイアーエムブレム』では、戦闘マップと物語の間にあった余白を広げることで、キャラクターを育てたり、寄り道をしたり、自分のペースでゲームを進めたりできるようになった。4人の主人公を中心に異なる物語を進められることも含め、シリーズを一つの大きなRPGとして遊ばせる方向性はかなり大胆だ。
しかし、そのRPG化が、そのまま弱点にもなっている。『ファイアーエムブレム』を遊ぶ人が、必ずしも長時間の探索や育成を求めているとは限らない。さらに気になるのが戦闘の難易度だ。ノーマルでは敵を細かく処理しなくても勝てる場面が多く、育成したユニットを前に出して押し切れるケースもある。『ファイアーエムブレム』の戦闘で重要なのは、単にキャラクターを強くすることではなく、「誰をどこに置くか」「次のターンに何が起きるか」を考えることだ。そこに十分なプレッシャーがなければ、戦略を考える楽しさよりも、キャラクターを育てて強くするRPG的な楽しさが前面に出てしまう。
つまり『万紫千紅』は、シリーズを大きく拡張したことが長所である一方、その拡張によって従来のSRPGとしての密度が薄くなった部分もある。『鬼武者』が「戦闘は非常に強いが、戦闘以外のゲームデザインが弱い」作品だとすれば、『万紫千紅』は「ゲーム全体の規模と自由度は大きいが、その分だけ戦闘の緊張感が薄くなっている」作品と言える。
残りの3作品も、評価軸はそれぞれ違う
『Mixtape』は、音楽と映像、青春の記憶を組み合わせた体験そのものが評価の中心になっている。『Mina the Hollower』は、古典的な2Dアクションをベースに、探索や戦闘の密度を高めたゲームデザインが強みだ。『Valheim』は、サバイバル、クラフト、探索、建築を組み合わせ、プレイヤー自身が遊び方を作っていく自由度に大きな価値がある。
この3本を含めて考えると、6本の10点作品が同じ方向を向いているわけではないことが分かる。音楽と物語、古典的アクション、サバイバル、レーシング、剣戟、RPG化したSRPG。それぞれ評価されている部分はかなり違う。一方で、それぞれに「ここは弱い」と言える部分も存在する。
10点という数字が抱える矛盾
だからこそ、「10点なのだから欠点がないはずだ」と考えると、今年の6本には違和感が出てくる。逆に、「一番強い部分をどこまで高く評価するか」という基準なら、10点を付けた理由はかなり理解しやすい。結局、レビューで大きく差が出るのは、長所の評価よりも、短所をどこまで減点するかという部分なのだろう。
もちろん、IGNの10点が「間違っている」という話ではない。IGN JAPANの8点が正しいという話でもない。そもそもゲームには公式の採点基準があるわけではなく、10点という数字も、そのレビューを書いた人が作品のどこに価値を置いたかによって意味が変わる。だから今年の6本を見て、「IGNは10点を出しすぎている」とだけ考えるのは少し違うのかもしれない。むしろ面白いのは、10点を取ったゲームであっても、実際にはかなり大きな長所と短所を同時に持っていることだ。レビューの数字だけを見れば同じ10点でも、なぜ10点なのかまで読めば、評価されているものはそれぞれまったく違う。
ゲームレビューで本当に比較したいのは、10点と8点という数字ではない。そのレビュアーがどの長所を評価し、どの短所をどこまで許容したのか。その部分まで見て初めて、同じ10点という数字の違いが見えてくる。
結論
2026年のIGNの6本は、ゲームの評価が「完成度」という一つの尺度だけでは決まらないことを、かなり分かりやすく示している。長所が突出したゲームを10点と評価するのか、それとも長所と短所を一つずつ並べて、ゲーム全体として10点に届くかを見るのか。『Forza Horizon 6』『鬼武者 Way of the Sword』『ファイアーエムブレム 万紫千紅』を並べるだけでも、その違いはかなりはっきり見えてくる。
ただ、ここまで評価の基準が違うのであれば、10点という数字そのものにどこまで意味があるのかは疑問が残る。ある作品では「突出した長所」が10点の理由になり、別の作品では「全体としての完成度」が10点の理由になる。それでも同じ10点として並べられてしまうからだ。10点という一つの数字に、あまりにも違う評価基準を押し込めている。数字が客観的に見えるほど、実際のレビューとのズレも大きくなる。

