2026年、『悪魔城ドラキュラ』が40周年を迎えた。KONAMIは今年をシリーズ40周年の節目と位置づけ、10月15日には新作『Castlevania: Belmont's Curse』を発売する。東京ゲームショウ2026では国内初の試遊も行われ、40年間の歴史を振り返る展示も用意された。
さらに興味深いのは、KONAMIが『Belmont's Curse』を単なる40周年記念タイトルではなく、40周年企画の「第1弾」と位置づけていることだ。今後もシリーズに関する展開が予定されているという。
つまり、『悪魔城ドラキュラ』は本当に戻ってこようとしている。ただ、このシリーズには一つ大きな問題がある。新作が長い間出ていなかったことだ。そして、その10年以上の間に、ゲーム市場そのものが大きく変わってしまった。
『悪魔城ドラキュラ』はなぜ新作を失ったのか
『悪魔城ドラキュラ』は、決して昔のままのシリーズではなかった。
1986年の第1作から始まり、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』では探索、マップの開放、装備、キャラクター成長などを組み合わせた新しいゲームデザインを確立した。その後もGBAやニンテンドーDSで多くの作品が発売され、「探索型の悪魔城」はシリーズを代表するスタイルになっていった。
一方で、KONAMIは別の方向にも挑戦している。
2010年の『Castlevania: Lords of Shadow』ではシリーズを大規模な3Dアクションへと転換し、2014年には続編が発売された。その間に五十嵐孝司氏をはじめ、シリーズを支えてきた開発者たちもKONAMIを離れていった。
そして、『悪魔城ドラキュラ』の新作は長い沈黙に入る。
ただ、これを単純に「KONAMIがIPを捨てた」と考えるのは少し違う。KONAMIはその後も『Castlevania Anniversary Collection』『Castlevania Advance Collection』『Castlevania Dominus Collection』などを発売し、Netflixのアニメシリーズなどを通してIPそのものを維持してきた。
止まったのは、『悪魔城ドラキュラ』という名前ではない。新しい『悪魔城ドラキュラ』を作り続けることだった。
そのゲームデザインは残った
ここからが、このシリーズの面白いところだ。
『悪魔城ドラキュラ』が新作を出さなくなった一方で、そこで生まれたゲームデザインはむしろ広がっていった。
『スーパーメトロイド』と『月下の夜想曲』によって形作られた探索型アクションは、現在では「メトロイドヴァニア」という名前で一つのジャンルとして定着している。
そして、この10年ほどでこのジャンルは大きく発展した。『Hollow Knight』は探索と戦闘、マップ、世界観を一つの巨大な世界としてまとめ上げ、『Ori』は美術表現とアクションの完成度を追求した。『Celeste』は探索型ではないものの、2Dプラットフォームアクションそのものを極限まで突き詰めた作品として存在感を示した。『Dead Cells』は2Dアクションにローグライクの要素を組み合わせ、新しい方向へと発展させている。さらに『Bloodstained』のように、かつての『悪魔城ドラキュラ』を直接受け継ぐ作品まで登場した。
つまり、『悪魔城ドラキュラ』がいなくなっても、その影響を受けたゲームは増え続けた。
今でも私たちは「メトロイドヴァニア」という言葉を使ってゲームのジャンルを説明している。その言葉の中には、10年以上もコンソール向けの新作を継続して発売していなかった「ヴァニア」、つまり『悪魔城ドラキュラ』の名前が残っている。これはかなり奇妙な状況だ。
『悪魔城ドラキュラ』は市場から姿を消したのに、そのゲームデザインを受け継いだ市場はむしろ大きくなっていた。
相手は「後継者」になっている
だからこそ、2026年の『Belmont's Curse』は昔の新作とは意味が違う。
もしKONAMIが2010年代を通して『悪魔城ドラキュラ』を作り続けていたなら、「これは良い悪魔城なのか」という問いだけで済んだかもしれない。しかし今のプレイヤーは、『Hollow Knight』も『Ori』も『Dead Cells』も知っている。『Bloodstained』のように、『悪魔城』そのものを受け継ごうとした作品もすでに存在する。
しかも、それらは単なる模倣ではない。『悪魔城ドラキュラ』から受け継いだ要素を、それぞれ別の方向へ発展させてきた。だから今、『悪魔城ドラキュラ』が戻ってきたときに問われるのは、「元祖だから遊ぶ価値があるのか」ということではない。
「今の時代に、なぜもう一度『悪魔城ドラキュラ』なのか」ということだ。そこで開発陣が面白い。『Belmont's Curse』には、『Dead Cells』で知られるEvil Empireが関わっている。かつてこのジャンルを作った側のIPが長い眠りから戻ってきて、その間にこのジャンルを発展させた現代の開発チームと組む。
言ってしまえば、「後から来た世代」に自分たちのゲームをもう一度現代に適応させてもらうような構図でもある。
TGSで見えた『Belmont's Curse』
今回の東京ゲームショウでの試遊を見る限り、『Belmont's Curse』は単純なリメイク路線ではない。ゴシック調の世界観、ベルモント一族、吸血鬼、城、伝統的な敵など、『悪魔城ドラキュラ』と聞いて思い浮かべる要素はしっかり残されている。
一方で、主人公には新キャラクターのローズ・ベルモントを採用。1499年のパリを舞台にし、新しい成長システムも導入されている。敵を倒すことで「Arcana」を獲得し、魔法や特殊アクションを強化していく仕組みも用意されている。
つまり、過去の『悪魔城』をそのまま再現するのではなく、シリーズらしさを残しながら、現在の2Dアクションに合わせて作り直そうとしている。これは40周年というタイミングを考えると、かなり重要な方向性だと思う。完全に昔のままなら、結局は懐古的な作品になってしまう。逆に『悪魔城』らしさを完全に捨てれば、それはもう『悪魔城ドラキュラ』である必要がなくなる。
その間で、どこまで変えて、どこまで残すのか。今回の復活で問われているのは、そこなのだろう。
40周年の先に、『悪魔城ドラキュラ』は何をするのか
だから、本当に注目したいのは『Belmont's Curse』そのものだけではない。KONAMIがこの先、『悪魔城ドラキュラ』というIPをどう扱っていくのかだ。この10年以上、『悪魔城ドラキュラ』は本当の意味で消えていたわけではない。過去作のコレクション、リマスター、アニメ、コラボレーションなどによって、その名前はずっと残っていた。
しかし、それらの多くは過去に作られたものを維持するための展開だった。今回の40周年は、そこから一歩進もうとしている。『Belmont's Curse』は40周年企画の第1弾とされている。つまり、この先には新作、新しいコラボレーション、あるいはこれまでとは違う形の『悪魔城ドラキュラ』が登場する可能性もある。
ただ、ここからが難しい。
『悪魔城ドラキュラ』にはすでに40年分の歴史がある。プレイヤーは『月下の夜想曲』のような探索を期待するだろうし、ゴシックな城や美術、歯ごたえのある2Dアクションも求めるだろう。しかし、それらをもう一度組み合わせるだけでは、結局「懐かしい悪魔城」で終わってしまう。かといって、大きく変えれば「これはもう悪魔城なのか」という問題が出てくる。このシリーズが再始動した後に向き合うことになるのは、結局この問題なのだと思う。
40周年は、KONAMIにとって『悪魔城ドラキュラ』をもう一度整理する機会になった。そしてこの10年以上で証明されたのは、このシリーズが新作を出さなくても名前を残せるということだった。これから必要になるのは、その名前からもう一度新しいものを生み出せるかどうかだ。
『Belmont's Curse』は、その最初の一歩にすぎない。
40周年で本当に見るべきなのは、この1本が過去の『悪魔城』をどこまで再現できるかだけではない。その先で、『悪魔城ドラキュラ』が再び継続していくシリーズになれるのか。
そこにこそ、今回の40周年の意味がある。

