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DEBUT

Infinite Joy, finally OPEN!

INFINITE JOYの店頭から見た、いまの秋葉原

秋葉原で店をやっていると、「外国人観光客が増えた」という一言だけでは説明しきれない変化を感じることがある。INFINITE JOYでは、来店客の85%以上が外国人だ。もちろん、これは秋葉原全体の客層を示す数字ではない。店の立地や扱っている商品、免税対応の有無によって、店舗ごとの客層は大きく異なる。それでも、毎日店頭に立っていると、現在の秋葉原がどのような街になっているのかを、かなり近い距離から見ることができる。

まず変わるのは、店にとっての「当然」だ。外国人客が大半を占めると、スタッフが英語で接客できることは、単なる付加価値ではなく、店舗を運営するための基本的な条件になる。商品の説明だけではなく、価格、購入制限、免税、在庫、店頭受取など、日本人なら簡単な説明で済むことでも、一つずつ言葉にして伝える必要がある。しかも、これは単純な翻訳ではない。日本の店側が当然だと思っているルールや感覚そのものを、別の文化圏の人にも理解できる形に置き換える必要がある。

ゲームやキャラクターグッズを扱っていると、その違いはさらに分かりやすい。ランダム仕様の商品、購入数の制限、発売日、再入荷など、日本では当たり前になっている販売の仕組みも、海外から来た旅行者にとっては初めて見るものかもしれない。店頭で一つずつ説明していると、日本の小売店が国内の消費習慣を前提として成り立っていることにも気づかされる。

そして、外国人客が多いことで、「何が人気なのか」という見方も変わる。日本国内で人気のある商品と、海外から来た人が日本で買いたい商品は、必ずしも一致しない。日本では広く知られているIPでも、海外では一部の地域や世代にしか知られていないことがある。その一方で、日本国内では大きな存在感がない商品が、海外のファンにとっては「日本に来たら買いたいもの」になっていることもある。

旅行者の場合、「日本でしか買えない」「秋葉原で見つけた」「旅行の記念になる」といった理由も購入につながる。つまり、店頭で見ていると、商品の人気は単純な知名度や国内での売れ行きだけでは測れない。日本のゲームやアニメ、キャラクター商品が、国内市場だけを相手にするものではなくなっていることを、売場からも感じる。

ここから秋葉原という街を見ると、もう一つの変化が見えてくる。昔の秋葉原には、「オタクなら秋葉原に行く」というかなり強い共通認識があった。ゲーム、アニメ、漫画、フィギュア、同人誌、PC、電気製品など、趣味が違っていても、秋葉原へ行けば何かが見つかった。秋葉原は一つのジャンルに特化した街というより、さまざまな趣味を持つ人が同じ場所に集まる街だった。

しかし、現在の東京では、その構造は以前ほど一つにまとまっていない。池袋には女性向けコンテンツ、キャラクターグッズ、BL、2.5次元、推し活などの店が集まり、中野には中野ブロードウェイを中心に、古い作品やヴィンテージ玩具、コレクターズアイテムを扱う専門店が集まっている。それぞれの街に異なる客層と消費スタイルが形成され、かつて「オタク文化」として一括りにされていたものが、東京の複数の場所に分かれて存在するようになった。

これは、秋葉原からオタクがいなくなったという話とは少し違う。アニメやゲームが大きな産業になり、女性向けコンテンツ、推し活、ゲーム、フィギュア、ヴィンテージ玩具など、それぞれが独自の市場として成長した結果、一つの街にすべてが集まる必要がなくなったとも考えられる。

それでも、秋葉原には昔から続く性格が残っている。少し路地に入れば、特定のジャンルだけを長く扱っている小さな店があり、店ごとに品揃えも違う。「あの店なら珍しいフィギュアがある」「このジャンルならあの店」といった情報を知っている人にとっては、商品そのものだけでなく、店を探しながら街を歩くことにも意味がある。

これは、インターネットで商品名を検索して最安値を探すのとは少し違う。知らなかった店を見つけたり、目的の商品とは別のものが目に入ったりする。秋葉原をよく知っている人にとっては、こうした偶然も含めて街を歩くこと自体が一つの消費体験になっている。

一方で、それとは別の変化として、海外から日本のゲームやアニメ、キャラクター商品を買いに来る人が秋葉原に集まっている。日本の商品を買うことそのものが旅行の目的の一つになり、その中でも秋葉原が行き先として選ばれる。そう考えると、秋葉原は国内の趣味の街であるだけでなく、日本のポップカルチャーを海外の消費者につなぐ場所としても機能するようになったと言える。

ここで重要なのは、国内のオタク文化が東京の複数の街へ広がったことと、海外からの消費者が秋葉原に集まることを、一つの現象として考えないことだと思う。この二つは別々に起きている。ただ、その二つが同時に進んでいることで、現在の秋葉原は以前とは違う構造になっている。

INFINITE JOYで外国人客が85%を超えていることも、その変化を見る一つの材料になる。一店舗の数字なので、秋葉原全体を代表することはできない。それでも、店頭に立っていると、「外国人観光客が増えた」というより、秋葉原で行われる消費そのものが国内だけではなく世界に広がっているという感覚のほうが近い。

では、秋葉原はもう「オタクの街」ではないのだろうか。

そう単純に考える必要はないと思う。むしろ、「オタクの街」という言葉だけでは、現在の秋葉原を説明しきれなくなったのではないか。

昔の秋葉原には、さまざまな趣味を持つ人が一つの場所に集まるという役割があった。現在は、その文化の一部が池袋や中野などにも広がっている。一方で秋葉原には、日本のゲームやアニメ、キャラクター商品を求めて海外から人が訪れ、昔からの専門店を目当てに歩く人もいる。

秋葉原は昔の役割を完全に失ったわけでも、単純に外国人向けの街になったわけでもない。国内のオタク文化を一か所に集める街だった時代から、日本のポップカルチャーを世界の消費者につなぎながら、専門店を巡って商品を探す街へ。その役割が変わり、同時に増えている。

少なくとも、店頭に立っていると、今の秋葉原は「昔と違う街」ではあっても、「昔の秋葉原がなくなった街」には見えない。

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