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『STAR WARS: Galactic Racer』から見る、EAを離れたCriterionのその後

10月6日に発売された『STAR WARS: Galactic Racer』は、単純に「Star Warsの新作レーシングゲーム」として見るより、開発陣の経歴を知ってから遊んだほうが面白いタイトルだと思う。

開発を手掛けるFuse Gamesは、2023年に設立されたスタジオだ。中心にいるのは、かつてCriterion Gamesで『Burnout』や『Need for Speed』などに携わってきたスタッフ。CEOのMatt Websterも長年EAとCriterionで仕事をしてきた人物で、今回の『Galactic Racer』はFuse Gamesにとって最初のタイトルになる。つまり、これは実績のない新人チームが突然Star Warsの大型タイトルを作ったという話ではない。長年EAの中でレーシングゲームを作ってきた人たちが、そこを離れて自分たちのスタジオを立ち上げ、改めて自分たちの得意分野に戻ってきた作品だ。

Criterionの歴史を考えると、この構図には少し皮肉なところもある。『Burnout』で一時代を作ったCriterionは、その後EAの『Need for Speed』を支える重要なスタジオになった。しかしEAの大型タイトル開発体制の中で、Criterionの役割は次第に変わり、近年は『Battlefield』の開発支援にも参加するようになった。かつて街中を自由に走り、派手なクラッシュそのものをゲームの魅力にしていたスタジオが、いつの間にか巨大なプロジェクトを支える側になっていったわけだ。

その一方で、Criterion出身者が作ったFuse Gamesは、最初の作品として再びレーシングゲームを選んだ。しかも『Galactic Racer』のゲーム性を見ると、単にStar Warsの乗り物を使ったレースゲームではない。高速走行、ブースト、接触、ライバルへのテイクダウンといった要素を前面に出し、レースそのものをアクションとして成立させている。これは『Burnout』から続くCriterion系の「速く走ること」だけではなく、「速く走りながら何をするか」をゲームの中心に置く考え方にかなり近い。

ただし、『Galactic Racer』は過去のCriterion作品をそのまま再現したゲームでもない。キャンペーンにはラン単位の構造が採用され、レースのたびにルートや強化を選びながら進んでいく。車両にも異なる性能やプレイスタイルが設定されており、昔のアーケードレーサーのように「同じコースを何度も走ってタイムを縮める」だけではなく、その場の判断やビルドによってレース展開を変える方向に進化させている。ここには、過去のCriterion作品をそのまま再現するのではなく、今の市場に合わせて別のシステムを組み合わせようとする意図も見える。

一方で、このゲームを語るなら、現在のStar Warsゲームが置かれている状況も無視できない。

『Star Wars Jedi: Survivor』は2023年に発売され、Respawn Entertainmentによるシングルプレイヤー作品として一定の評価を得た。ところが、その翌年に登場したUbisoft Massiveの『Star Wars Outlaws』は、Star Wars初のオープンワールド作品として大々的に展開されたにもかかわらず、発売後の販売はUbisoftの期待を下回った。Ubisoft自身が2024年9月の業績修正で「Star Wars Outlaws」の初動が想定より弱かったことを明記し、その後のホリデーシーズンの売上も低調だったとしている。

ここには少し皮肉がある。『Outlaws』は「初のオープンワールドStar Wars」という非常に強い売り文句を持っていた。しかし、ゲーム業界では「Star Warsだから売れる」という時代ではない。むしろStar Warsという巨大IPを使っているからこそ、開発費も期待値も高くなり、失敗したときのダメージも大きい。『Outlaws』の開発費が『Assassin's Creed Mirage』より少なくとも30%高かったとの市場分析も報じられており、Ubisoftにとっては単なる一本の中規模タイトルではなかった。

その意味では、現在のStar Warsはゲーム会社にとって少し「厄介なIP」になっているように見える。

知名度は世界最高クラスだが、それだけでゲームが売れるわけではない。むしろファンが期待する世界観やキャラクターの再現度、AAAタイトルとしての完成度、そして巨大IPに見合った販売本数まで同時に要求される。『Survivor』のようにゲームそのものが評価されれば強いが、『Outlaws』のように販売面で期待を下回れば、IPの価値がむしろ開発会社側の負担になる。

だからこそ『Galactic Racer』の立ち位置は面白い。

Fuse GamesはStar Warsという巨大IPを使いながら、ゲームの中心に置いたのは「銀河を自由に冒険する巨大なオープンワールド」でも「映画の物語を再現するアクションアドベンチャー」でもない。あくまでレーシングゲームだ。Star Warsの世界を借りながら、ゲームとしての目的を最初から明確に絞っている。

そしてStar Warsには、1999年の『Star Wars Episode I: Racer』という強烈な前例がある。ポッドレースという映画の一場面を、そのままゲームの中心にした作品だ。その後もレーシング系タイトルは存在したものの、2002年の『Racer Revenge』以降、Star Warsの本格的なレーシングゲームは長く途絶えていた。Matt Webster自身も、Star Warsレーシングゲームが長年作られていなかったことを「white whale」と表現している。

つまりFuse Gamesにとっては、巨大IPを使って何でもできるゲームを作るのではなく、「自分たちが最もよく知っているレーシングゲーム」と「Star Wars」を組み合わせたほうが明確だった。Criterionで培った高速走行やクラッシュを中心としたゲームデザインを考えれば、この選択にはかなり納得できる。

ここで、もう一つ注目したいのがパブリッシャーのSecret Modeだ。

Secret ModeはEAやUbisoftのような巨大パブリッシャーではなく、これまで『A Little to the Left』や『Still Wakes the Deep』など、インディーから中規模のタイトルを中心に扱ってきた会社だ。今回の『Galactic Racer』は、そのラインナップの中でも明らかに規模が違う。PS5、Xbox Series X|S、PC向けに展開され、Star Warsという世界的IPを使ったフルプライス作品として発売されている。Secret Mode自身にとっても、これまでとは違う規模への挑戦になる。

ただ、Secret Modeが自社でAAAスタジオを作ったわけではない。ここが重要だと思う。

Fuse GamesにはCriterionでAAAタイトルを作ってきた経験者がいる。Lucasfilm Gamesとは過去にStar Wars関連の仕事をしてきた経験もあり、今回はその関係を再び利用している。そしてSecret Modeは、そのチームをパブリッシャーとして支える。つまり、Secret Modeが突然EAのような会社になったわけではなく、それぞれの会社が自分の得意分野を持ち寄ることで、大型タイトルを成立させようとしている。

現在のゲーム業界では、AAAタイトルの開発費と開発期間が膨らみ続けている。その中で興味深いのは、「大手パブリッシャーの中にいる大規模スタジオ」だけが大型タイトルを作る必要はないということだ。経験のある開発者が大手から独立し、必要な部分だけ外部のパートナーと組み、パブリッシャー側も自分たちの規模を超える作品に挑戦する。『Galactic Racer』は、そのモデルが実際に成立するかを見る一つのケースになっている。

もちろん、このゲームがそのまま「新しいCriterion」と呼べるわけではない。Fuse Gamesはまだ一作目であり、EA時代のCriterionと同じ規模のスタジオでもない。それでも、高速走行と衝突を中心にしたゲームデザインには、過去のCriterionから続くDNAがはっきりと残っている。

そしてStar WarsというIPが近年置かれている状況を考えると、このゲームはさらに興味深い。『Survivor』の後、Ubisoftは「Star Wars初のオープンワールド」という大きなカードを切った。しかし、それでも販売面では期待を下回った。巨大IPを持っているだけでは、もはやAAAゲームを成立させられない。だからこそ、Fuse Gamesのように「自分たちが何を作れるのか」を先に決め、その上にStar Warsを乗せる方法には意味がある。

『Galactic Racer』が大成功するかどうかはまだ分からない。ただ、この作品は少なくとも「Star Warsなら何を作っても成立する」という発想からは距離を置いている。

EAという巨大な組織の中でレーシングゲームを作ってきた人たちが外へ出て、2023年に新しいスタジオを作り、最初の作品としてもう一度レーシングゲームを選んだ。その作品を、これまでインディー寄りだったSecret Modeがパブリッシャーとして世に出す。

EAを離れたCriterionの人々が、もう一度自分たちの得意分野で勝負する。そして一時期よりも扱いが難しくなったStar Warsという巨大IPを、そのための舞台として使う。

『Galactic Racer』で本当に見るべきなのは、Star Warsそのものよりも、むしろこの構図なのかもしれない。

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